相続税申告の被相続人が約5%弱
国税庁公表の統計情報によれば、平成14事務年度の相続税申告の被相続人の割合は5%弱です。95%のほとんど方は、税制およびその優遇措置、特例措置により相続税がかかっておりません。ホッとするような、寂しいような事実ですが先ずそのことを述べておきます。庶民とは言えない方、つまり、ある程度も財産を持っていて心配という方は、以下読みすすめて下さい。
かけこみ贈与はダメ
相続開始前3年以内に被相続人から取得した財産には相続税がかかります。例えば、妻のため夫が少しずつ妻に財産を移すことは節税につながりますが、3年以内のものは相続税がかかります。男性の寿命は78才ですので早めに長期計画で妻に財産を移しましょう。女性の方も長生きとはいえ、85才が平均寿命ですから適宜移していきましょう。
みなし財産には相続税がかかる
法律上は相続税がかかる財産ではないのですが、相続税がかかる財産とみなされて相続税がかかる財産です。みなすのは税務署です。生命保険金、死亡退職金、生命保険契約に関する権利などです。例えば保険契約の契約者、被保険者がともに妻で、受取人が子とします、しかし実際に毎月の保険料を支払っていたのが夫であれば、夫が死亡の時、夫が支払った保険料を相続とみなす場合もあります。
贈与はこまめに、嫁、孫にする
遺産相続が特定の人に集中すると相続税の対象になりやすくなります。巨額の財産があり、妻や子どもに計画的に贈与しても追いつかない場合、嫁や孫など法定相続人ではない人にこまめに贈与するのも方法のひとつです。
墓地、仏壇などには相続税はかからない
故人のための墓地、仏壇などは相続税がかかりません。間違って含めないようにしましょう。
葬式費用は相続財産から差し引くことができる
遺産増額−葬式費用 ===> 相続税を計算
葬式費用は葬式が終るまでにかかったほぼ一切の費用です。お坊さんのお経代、戒名代、タクシー運転手や受付係への心づけ、ふるまった料理やお酒、粗品、お土産も含みます。初七日を葬式と一緒にしてしまう場合は初七日の費用もOKです。一方、初七日を後日に行う場合、香典返しや後日のお土産の別送などは葬式費用として差し引くことができません。葬式の準備が始まってから式の終了までに、料理、お酒、お土産、心づけ、初七日その他の仏事など忙しいですががんばって詰め込んでおくことが節税になります。
お経代、戒名代、心づけ、領収書は不要
これらのことは習慣として領収書をいちいち書いてもらうのは無理があります。領収書がなくても相続財産から差し引くことができます。日にち、相手方、金額が分かるようにきちんとノートしておいて下さい。ただし、心づけが100万円、戒名代が1000万円などとウソの申告をして節税対策をしようとしても税務署の方はプロとして相場をご存知ですし、「おたくの和尚さん、戒名代1000万円ももらったの?」、とお寺に電話されてすぐばれます。節税ではなく脱税ですね。
お坊さんは大勢呼んでもOK
お坊さんを大勢呼んで賑やかに読経してもらっても、お坊さん全員分の費用を相続財産から差し引くことができます。
香典は故人の遺産でありません
香典は財産として遺産総額に含める必要はありませんので相続税の対象外です。そのような考え方ですから、裏返しとし香典返しの費用を葬式費用として遺産総額から差し引くことはできません。
誰がコーディネイトするか
財産承継とそれに伴う相続税、贈与税のコーディネイトを誰がするかは難しい問題です。妻や子、親戚でうまくできれば良いですが、利害関係や専門知識の不足でなかなかうまくいきません。遺産承継に係るコーディネイトは“遺産整理業務”と呼ばれ信託銀行や弁護士の先生のような御大も力を入れている分野です。弁護士以外の士業の場合、遺言や遺産分割協議書では行政書士、土地建物など登記では司法書士、税では税理士です。各士業ともワンストップサービスを心がけていますので、法律で制限のある業務についてはうまく士業同士連携して行います。どちらが良いか、あまり詳しく書くとさしさわりがあるのでひかえます。